低髄液圧症候群とは、頭部にうけた衝撃が原因で硬膜が破れて脳の髄液が漏れ出してしまう症状のことです。脳の髄液が減ってしまうので、脳脊髄液減少症とも呼ばれます。
交通事故で頭を直接ぶつけたり、頭が激しく揺さぶられたりして低髄液圧症候群になるケースがほとんどですが、なかにはむち打ちから発生するケースもあるため、注意が必要です。
いずれにしても脳のケガですので、すみやかな処置が求められます。
低髄液圧症候群のおもな症状としては、頭痛、吐き気、めまい、耳鳴り、首の痛みなどのほか、倦怠感や疲労感、視力障害・視野狭窄、集中力・思考力の低下などがあげられます。
また、低髄液圧症候群の特有の特徴として、起き上がるときに症状が悪化する、という傾向があります。
症状が似ていることもあり、むち打ちと間違われることも多く、「むち打ちの治療をしているのに、いつまでたっても症状が改善しない」という場合は、低髄液圧症候群を疑ったほうがいいでしょう。
治療法としては、脳神経外科での「ブラッドパッチ」という方法が知られています。
これは、その名のとおり、低髄液圧症候群の原因ともなっている硬膜に空いた穴を、自分自身の血液でふさぐ治療法。穴をふさいでしまうことで、抜本的に症状を改善することが可能です。
血液を10ml~20mlを採取したら、硬膜の外側注入。効果は72時間以内に現れます。以前は保険適用外でハードルが高かった治療法でしたが、2012年以降は費用の一部が先進医療として保険適用されるようになりました。
低髄液圧症候群は下記等級の後遺障害と認められることがあります。
神経系統の機能または精神に障害を残し、服する事ができる労務が相当な程度に制限されるもの
局部に頑固な神経症状を残すもの
局部に神経症状を残すもの
現状、任意交渉での低髄液圧症候群の損害賠償には、保険会社はなかなか応じてくれません。「低髄液圧症候群ではなく、むち打ちである」と突っぱねられることも。
したがって、低髄液圧症候群であった場合は裁判を通じて損害賠償を請求していくことになります。
裁判所が低髄液圧症候群と認定する基準には、「事故態様が重大である」「事故当初から起立性頭痛が見られる」「髄液の漏出所見がある」「ブラッドパッチ療法施行後に顕著な改善がみられる」などのポイントがあるため、これらを証明できる準備をしておきましょう。
個人で準備するには難しいものもあるため、交通事故に詳しい弁護士などに相談することをおすすめします。